利用者さまの健康維持と、必要に応じたより良い医療を提供するため、平郁会では訪問医療としては画期的とも言える定期的な訪問検査を行なっている。
今回は老人ホーム等での大規模検査を担当している検査技師チームに話を聞いた。
まず始めにこれまでの経歴を教えてください
中村さん
私の経歴はちょっと変わっていて、大学卒業後は民間企業の一般職として7年間働いていました。その間に経験した東日本大震災が、医療職を志したきっかけです。自分なりに調べて「臨床検査技師」という職種を知り、学校に入り直して勉強しました。
資格取得後は一般病院の検体検査部を1年間経験し、そのあと平郁会に転職して今に至ります。ですから私が実際に患者さまと関わるようになったのは平郁会が初めてなんです。
磯崎さん
私は最初は急性期病院に3年間勤務し、採血や心電図、エコーなど検査業務全般を経験しました。その後クリニックに転職して、検査のほかに医療機器の調整や提案なども行っていました。ですがクリニックの経営が傾いてしまい、転職を考えている時に出会ったのが平郁会です。
内田さん
前職は急性期病院です。3年間勤務し、一般的な生理検査全般に加えて細菌検査や血液検査の分析なども経験しました。
みなさん転職での入職ですが、平郁会を選んだ理由は?
内田さん
訪問診療で採血を行っていること自体がとても珍しいので、どんな世界なんだろうと興味を持ちました。それから正直なところ、働きやすさの面も大きかったです。前職では月に何度かの長時間勤務があり、休憩時間もかなり少なくて。
ですから今は外に出て太陽を浴びたり、季節を感じることもできて、もう最高なんです。長く仕事を続けていくにはまず自分の健康が資本ですから。
磯崎さん
分かります!私も今後の人生を考えた時、仕事とプライベートを両立できる職場を探そうと思っていました。病院時代は夜勤やオンコール勤務があり、周囲では40歳を越えたあたりで転職される方も多くて。それを見ていて自分も体力的に難しくなるだろうなって。今は夜勤はありませんし残業も少なく、きちんと休みも取れる。そうした勤務形態だけでなく、接客が好きな私にとっては人と関われる仕事であることにも惹かれました。
中村さん
私は祖父が医師で往診も行っていたので、訪問診療はわりと身近に感じていました。ですが病院で働いていると訪問診療が実際どんなものかは分かりません。ですから一度は経験してみたいなと。
内田さん
介護需要が拡大していく日本では今後、病院は縮小し、訪問診療が主になっていくのではないかとも言われています。今は個人や小規模で行われていることの多い訪問診療ですが、現場が拡大するほどしっかりとした組織でなければ対応できなくなってくる。そうした意味でも、私たちのような役割がこれからさらに必要とされると思うんです。
普段はどんなお仕事をされているんですか?
中村さん
平郁会が連携するすべての老人ホーム等に訪問し、利用者さま全員に対して年に2回の採血検査と年に1回の心電図検査を行なっています。施設は100軒以上あり、ひとつの施設で最大100名の利用者さまが入居しています。私たちチームはそうした大規模な検査を担当しています。
磯崎さん
新規施設が加わればそれに応じて新たに計画を立てたり、医師から個別に検査依頼があった場合は都度、スケジュールに組み込んでいきます。
中村さん
訪問先は東京・神奈川・千葉などかなり範囲が広いので、効率よく回るためには使う交通機関やルートを含めて綿密にプランニングする必要があります。年間のスケジュールをまず決めて、それに沿って計画して訪問をしていくという流れです。
訪問診療での検査だからこそ心がけていることや、やりがいは?
磯崎さん
この仕事をする上でいちばん大切なのはコミュニケーション能力だと感じています。検査を求めて患者さまの方から訪れる病院と違って、訪問検査なので自ら望んで受ける人は少なく、中には痛いからと言って検査拒否をされる方も。そこをどうにか寄り添い、検査はしっかり行いつつも最後は笑顔で終われるように努力します。検査次第で常備薬が変わったり、利用者さまの健康にも大きく影響することですから。
中村さん
私たちは医師と帯同することがほとんどないので、利用者さまからしたら突然来た人間ですよね。相手の協力がないと行えない検査もたくさんありますので、いかに素早く打ち解けて「一緒に検査をする仲間」になっていただくかが勝負なんです。そうした意味でも笑顔は本当に大事だなと。
内田さん
あとは技師ひとりひとりの技術が同レベルであることでしょうか。だれが訪問しても安定した検査が行えるよう、チームの皆でいつも心がけています。
病院であれば医療機器などの環境が整っていますが、訪問診療の場合は検査対象者が座っていたり寝転んでいたり、部屋が散らかっていたりとシチュエーションが様々。ですから難しい条件下でもなるべく利用者さまに負担をかけずに一回で採血できるようになど、技師としての能力が求められるところにもこの仕事の面白さややりがいを感じています。
磯崎さん
利用者さまの中には「磯崎さんじゃなきゃ採血しない」と言ってくださる方もいて。年に一度、それも数分しか触れ合わない中でも仲良くなれたり、顔を覚えていただけるのは本当にうれしいですし、感動します。
平郁会の良いところを教えてください
内田さん
入職して衝撃を受けたのは、話しやすい人やコミュニケーションを大切にしている方がとにかく多いこと。
磯崎さん
雰囲気がすごく良いですよね。対立やギスギスした空気がなくて、組織のしくみが病院とは全然違うんだなあって。病院が課に分かれて流れ作業的に医療を行なっていくとしたら、平郁会は患者さまを中心とした円になって皆で診療に向き合っている感じです。医師にも相談をしやすいですし、患者さまのことを一緒に考えてくれます。
中村さん
検査課は単独で動くこともあって、他職種の助けがなければできない業務も多いんです。ですから自分も周りになにかあれば助けたいと思える。そんなところも、私が長く平郁会で働いている理由かもしれません。
磯崎さん
福利厚生の面では、最近さらに手厚くなりました。ホテルのスイーツビュッフェが割引になったり、ふだんプライベートで利用しているものが安くなるのは助かります。
内田さん
私は福利厚生を利用して映画を観ました。ホテルの宿泊やレンタカーの割引もありますよ。
中村さん
今年度から学会やセミナーに参加する際の旅費をカバーしていただけるようになり、私はそちらを利用して先日、大阪で行われた検査技師の学会に参加してきました。最新の情報を得たり、久しぶりに他団体の方と話す機会もあってモチベーションが上がりました。そしてやはり、訪問医療における検査はこれからますます伸びるブルーオーシャンだと確信しました。
今後の展望や目標をお聞かせください
磯崎さん
ひとりひとりの利用者さまにお会いできるのは訪問診療のメリット。そこを生かしてコミュニケーション力や技術を磨き、必要な検査を笑顔で終わらせられる検査課を目指して躍進していきたいです。
内田さん
入職当初より施設数も利用者数も増えていますから、今まで通りのやり方では回らなくなってくることも考えられます。検査対象が増えても今と変わらず質の高い検査を行えるよう、業務効率化に取り組むことが大切だと考えています。
中村さん
検査課は現在とても良いチームワークで動けていますので、この質をキープしたままより大規模な検査に対応できるよう体制を築いていくことが一番の目標です。
個人的にはワークライフバランスも大切にしていきたいです。これから高齢になっていく親を、これまでの知識と経験を総動員して介護していければいいなと思っています。